不動産コンサルティング 

不動産コンサルティングの実務について

第3章 事業構想の策定 3-2

3. 適正規模等の判定
(1) 規模について
A. 適正事業規模

 適正事業規模を見きわめるには、主に次の二つの方向からの判断が必要とされるが、一回の検討で決まるものではなく、試行錯誤を繰り返すことによって適正規模の最終案となるものです。
 なお、この判断は用途との相互関係も考慮しながら進める必要があります。
① 事業収支面からの判断
   概算ボリューム、概算収支による事業成立可能規模を把握する。
② 市場性からの判断
  賃貸する場合、テナントからの期待賃料から逆算した限界投資額を把握することが基本になる。

B. 建物の基本プランの検討

 基本プランとは専有(有効)面積・間取り・付帯設備等であるが、業種によって、また入居テナントによっても異なります。
a. 住居系
 (参考プラン)

(注1) 都市型及び外国人向けマンションの場合には、家具等の設置の有無に注意します。また、外国人向け及びファミリー賃貸マンションを計画する際には、駐車場の付置率に注意します。
(注2) 各タイプに応じた規模の設定は、賃料総額と密接な関係にあるため、慎重に設定することが求められます。

b. 事務所系
事務所ビルの場合、敷地条件により基本プランが決まります。
特に、1フロアあたりの規模は、テナントの募集賃料に影響を与えます。
駐車場を付設する場合、地下か地上か平面か立体化するか等により、コストに大きく影響を与えます。テナントの業種、業態によっては駐車場を多く必要とするケースがあります。
地下に貸室を設ける場合、飲食店を誘致するか、1階部分との併せ貸し等を計画する方法もあります。
c. 店舗系
業種・業態により基本プランは各々違うため、想定した商業テナントを意識したプランが必要となります。また業種によっては商業テナントをミックスさせることにより、相乗効果を生じさせ、集客力を高めることが可能となります。
 (代表例)

(2) グレードについて
A. グレードとは

 グレードとは、一般に建物の材質・外観・設備の等級や品等のことで、競合物件との差別化や賃料水準などと関係があるが、特に定められた基準はありません。

B. 適正グレードの判定

 グレードを適正なものにするための判定は、主に物件の特徴と市場性の二つの面を考えて行います。なお、予め入居テナントを想定してグレードを設定すること、及び事業採算を考慮し、過剰あるいは過少グレードにならなよう慎重に見きわめることが必要です。
a. 物件の特徴からの判定
敷地条件、立地条件、環境条件等の諸条件から判定するが、グレードに見合った売上高や賃料収入を得られるかどうかが課題です。
b. 市場性からの判定
同一地域における競合物件との関係で、競争力を持つグレードを設定する必要があります。
建物の適正グレードは、周辺の街並みにふさわしい外観・仕上げを保持し、入居テナントを十分意識した設備を備えていることが必要です。また、グレードを高くすれば当然コストも上昇し、場合によっては賃料に反映されないこともあるが、市場の中で競合物件との差別化につながる可能性があり、事業採算との調整が必要となります。

4. 事業スケジュールの策定

 事業スケジュールの策定は、事業収支計画における所要資金フロー(各種費用の必要時期)に目安を付けるため、重要な作業です。
 事業スケジュール策定上の留意点としては、予期せぬアクシデント(近隣交渉の遅延、工事中の障害発生など)が発生した場合においても極力対応できるよう、多少の余裕を持たせることです。

(1) 作業手順の整理

 不動産事業は計画、建築に1年以上の期間を要するものであり、更に事前の権利調整等の期間が必要となる場合があります。また測量やボーリング等費用の発生する調査を行った後でなければ、計画建物が確認できません。
 このため、基本計画の十分な練上げや、事前の調査の徹底、関係者の権利調整等の作業手順について余裕を見た上で整理しておく必要があります。

(2) 依頼者の資金計画の確認

 スケジュールの策定に当たっては、依頼者の資産、信用度及び金融事情による資金調達の難易度等を踏まえ、改めて依頼者の資金計画に関する意向を確認しておく必要があります。

事業スケジュール(一般的な例)

・上記スケジュールは、官庁等の許認可取得及び近隣住民との折衝又はテナントの要望等に変更される場合があることをお含みおきください。(※依頼者等に交付する場合は、この表示を付記しておく必要があります。)

事業スケジュール(等価交換の例)

・上記スケジュールは、官庁等の許認可取得及び近隣住民との折衝又はテナントの要望等により変更される場合があることをお含みおきください。(※依頼者等に交付する場合は、この表示を付記しておく必要があります。)
(※) 「所要月数」欄は、例えば1か月ごとに1~20などの数値を表示する等、案件に応じて適宜使用します。