不動産コンサルティング 

不動産コンサルティングの実務について

第3章 事業構想の策定 3-1

1.事業構想とは

 事業構想とは、マクロ環境分析で把握された都市環境・社会的背景・経済動向に加え、第2章「調査」の項で実施した調査・分析と依頼主ニーズを総合的に集約して形成するもので、具体的には①どのような建物を建築するか(適正用途・適正事業規模・入居テナント)②所要資金の調達方法③事業収支計画の三つの事項を柱とする。このうち、②については第4章「所要資金の調達方法」、③については、第5章「概算事業収支計画」において詳細に解説することとし、この章では①について説明します。

2.適正用途の判定
(1) 用途判定作業の目的

 A. 第1順位~第3順位程度までの適正用途及び不適正用途と考えられる各業種・業態を、第2章で実施した調査を裏付けとして幾つかの角度から定型的なチエック作業を行い、仮説による適正用途の判定が的確であることを検証します。
 B. 検討結果を依頼者が十分理解し納得できるように、企画提案書の中に次のような形で明示することが必要です。
 なお、次の表は用途判定作業の最終的な姿を示しています。

           適正
           やや問題あり
×           不適

(2) 用途判定の進め方

① 下記の(※)用途別チエックリストに基づき、具体的用途について「敷地条件」で不適業種の抽出を行い、「立地条件」、「環境条件」で、適正業種の抽出を行います。
② 判定は、業種(事態)ごとに行います。各系の用途は、「適」又は「不適」を選択するようにしてあるが、判断できない項目も含まれています。従って、「適」と判断できるものには○印、「不適」なものには×印を該当欄に表示して評価を行います。なお、判断できない項目については△印をつけます。
③ 総合判定は、「敷地条件」で1か所でも×印が付いたものは不適業種と判断し、以下の評価はしません。また、「敷地条件」で×印がなくても「立地条件」以下に1か所でも×印が付いたものは不適業種とします。従って、「適正業種」は「敷地条件」に×印がなく、「立地条件」以下に○印があるものになり、この基準で判断できないものについては「可能業種」(△印)として残します。
④ 絞り込まれた業種(業態)について、顧客の要望と調査・分析の結果を踏まえ、具体的な検討に入ります。絞り込まれた業種(業態)と顧客の要望が一致しなかった場合は、具体的な根拠に基づいて顧客を誘導して行かなければなりません。決して顧客の要望だけに合わせてはならないのです。
(※)
 A. 住居系用途

 B. 事務所系用途

 C. 店舗系用途

 D. 余暇・宿泊系用途

 E. その他