不動産コンサルティング 

不動産コンサルティング実務について

第1章 不動産コンサルティングの初動段階 1-1

1.相談受付

 不動産コンサルティングの初動段階は、物件資料が何もなかったり、依頼者の動機や目的がわかりにくいなど、ほかの不動産業務と異なり一見漠然としていることが少なくありません。このため入口段階の対応が大切です。相談受付の段階で依頼者から最低限聴取すべき事項は次のとおりであり、コンサルティングを引き受けるかどうかの第一関門です。

(1)相談者の権限

 不動産コンサルティング業務は、依頼者の要請に従って適切なアドバイスを行うものであるが、相談者が必ずしも対象物件の処分や利用について権限を有している者とは限りません。相談者が、計画地及び事業についていかなる権限を有するのか、相談者と実権者とが異なる場合は両者がどのような関係にあるのかを確認する必要があり、できるだけ早い時期に直接権限を有する者の意向を確認すべきです。なお、不動産の権利関係は、共有者、借地人、借家人、転借人など相談者以外に多くの関係者がいる場合もあるので、関係者の氏名、人数、関係などを把握しておきます。 

(2)依頼者の資産状況・所得水準・資金計画

 依頼者の資産状況や所得水準等は事業を進める上での資金調達などに大きな影響があるため、できる限り具体的に聴取する必要があります。資産状況等は、依頼者の動機・意識にも影響を及ぼしているものです。
 また、依頼者が資金調達計画について意向・要望を持っていれば、その内容を聴取しておきます。

(3) 依頼の動機・目的と背景

 まず、未整理なままで語られることの多い依頼者の意向を整理しながら、その真意を把握することが大切です。
 例えば、次の表は、相談受付の当初の段階における依頼者の意向です。

 つまり、遊休地に対する固定資産税・都市計画税の支払いが経済的に負担となっており、この負担を緩和するために、遊休地を相応の収入が図れる月極駐車場にし、その収入を納税のための源資に充てたいという例です。この段階では背景について聴取できていません。
 次の表は、依頼者の意識、将来に対する考え方、家族の状況等々について依頼者と話し合いをした後に整理した例です。ただし、背景・動機・目的の各項目には優先順位が必要であるが、ここでは省略しています。

 すなわち、依頼者の意識や家族状況等から相談の「背景」を把握することによって、「動機・目的」共に複合的であることが理解でき、その解決策の一つとして「手段」が選定されます。当初の依頼者の意向は、将来の対策については先送りとし、当面のコスト負担緩和策に限定していたことになります。少なくとも総合的な検討は行われていません。

(4) 物件の概要

 依頼者から相談があった場合、対象地について、まず最低でも次の項目を聴取します。その際、手元の住宅地図を見ながら話を進めることで、状況把握の助けとなることが多いです。
① 対象地の所在
② 対象地の形状
③ 対象地の面積
④ 対象地の前面道路と高低差及び前面道路幅員