不動産コンサルティング 

不動産コンサルティングの実務について

第7章 不動産投資分析 

A. インベストメント・リスク

 不動産に限らず、金融投資商品などは投資対象資産に一般的に認められるリスクです。インベストメント・リスクは、マーケット・リスクと事業特性リスクに分けることができます。
a. マーケット・リスク
 投資対象資産が、その取引市場において成立する価格に左右されるリスクである市況リスクと、市場において直ぐに換金できないリスクである流動性リスクの二つを、マーケット・リスク(市場性リスク)といいます。
ア. 市況リスク
 経済情勢や需給のバランスの変化が、市場を通じて対象不動産の価格、賃料、空室率に影響を与えます。自由競争の市場経済を前提とする以上、このリスクをゼロにすることはできません。
イ. 流動性リスク
 投資資産は必要な時(投資採算性から見て出口に来たと判断した時)すぐに換金できることが重要です。すぐに換金できなければ、撤退の最良のタイミングを失います。公開取引市場の不存在、投資家数の限定、時価評価の困難性などが不動産の流動性を制約しているため、不動産の流動性リスクは高いです。これを補完する商品が上場不動産投信(J-REIT)であり、毎日市場で値が付き取引が可能となるから、流動性リスクは低くなります。
b. 事業特性リスク
 事業特性リスクは、事業別リスクとマネジメント・リスクに分類されます。
ア. 事業別リスク
 住宅、オフィス、店舗、その他ホテルやスポーツ施設等の特殊なものなど、不動産賃貸の用途により不動産収益の変動リスクは各々相違します。通常、住宅が最も事業別リスクが小さいとされます。

イ. マネジメント・リスク
 不動産賃貸事業においても、個別物件ごとのマネジメントの内容により、収益は異なります。
 事業の運営管理のあり方により、リスクは大きくも小さくもなります。また、地震・火災などについては保険によりリスクをヘッジすることができるが、そのような措置を講じているかどうかもマネジメント・リスクの一部です。

B. 不動産リスク(リアルエステート・リスク)

 不動産には、他の投資資産には見られない不動産独自の投資リスクがあり、これを不動産リスクといいます。不動産リスクは大別して、税法を含めた法制度全般に係る法的リスクと、不動産の個別具体的な物理的要因に起因する物理的リスクがあります。
a. 法的リスク
 法的リスクとしては、主に次のリスクが挙げられます。
ア. 借地借家リスク
 借地・借家関係では、借地人、借家人の保護が法制度に組み込まれているため、賃貸事業を行う側はこれに配慮しなければなりません。また、賃料増減額請求権の行使などにより、賃料は不安定性のリスクを抱えざるを得ません。なお新規事業においては、定期借家制度など、従来よりは賃料の安定性が確保できる新しい法制による事業実績も増えつつあります。
イ. 法規制リスク
 都市計画法、建築基準法など公法上の規制により土地利用が制限されるリスクです。将来の改正法のほか、いわゆる既概存不適格建築物のように建築時には適法であったが法改正に伴い不適格となったものなどもあります。
ウ. 事業開発リスク
 事業開発型の不動産投資を行う場合には、開発の許認可に伴うリスクがあります。許認可をめぐる地元調整あるいは近隣折衝の長期化、各種の公的な負担条件による事業収益の圧縮などです。
エ. 税制リスク
 不動産取得税や登録免許税等の権利移転に伴う税負担、固定資産税、都市計画税等の不動産保有に伴う税負担、及び会社情勢の変化や政策上の観点から、各種の租税特別措置について見直し・変更が実施され、対象不動産の収益性に影響をおよぼおすリスクがあります。
b. 物理的リスク
 物理的リスクとしては、主に次のリスクが挙げられます。
ア. 立地地域リスク
 例えば、立地地域に所在する工場の排煙からダイオキシンが検出されたケースなど、不動産はその立地する地域特性の変動により影響を受けます。これが立地地域リスクである。地震、地すべり、火山噴火の影響なども立地地域リスクです。
イ. 地盤・地質リスク
 近年、特に注目されるようになってきたリスクです。地質とりわけ土壌汚染については、通常、環境調査レポートによる調査結果が開示されるので、その結果によってリスクの多寡を判定することになります。
ウ. 建物リスク
 震災・火災等の災害による建物破損のリスク、経年劣化による修繕・改修コストの負担増リスク、アスベスト、PCB、その他人体に悪影響を及ぼす物質が使用されているリスクなどがあります。これらについては、建物診断調査や、環境調査によって情報開示されるのが通例であるため、これを踏まえて判断することとなります。

 以上の物理的リスクは、従来やや看過される傾向にあったが、近年では明確に不動産投資リスクとして把握されるようになり、これを調査する業務としてデューデリジェンス業務が普及してきました。